AMBASSADOR/hiro
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アンバサバーおすすめの撮影ポイント

待ちに待った季節 | 撮影日: 2022.04.10

ミルキーホワイトの海の上をミルキーウェイが渡る


白老町虎杖浜/アヨロ海岸

 白老町虎杖浜は温泉をはじめ、タラコなど海産物が人気。でも、私がおすすめしたいのはアヨロ海岸の風景です。白老町の海岸はほぼ一直線で穏やかな表情をしていますが、虎杖浜から登別漁港の間の海岸は、巨大なノミで削ったような荒々しい岩壁が連なる、外国のような風景に変化します。
 岩壁の下は砂浜。その波打ち際には大小の奇岩怪石があり、岩礁も太平洋の波に洗われています。見上げると崖の縁に、赤白に塗り分けられた灯台が立っています。見た瞬間、私はこんな景色をずっと求めていたんだ、と感じました。
 海岸には縄文時代の遺跡があるなど、悠久の昔から人が住んでいたことがわかっています。今はクライミングの人気エリアにもなっていて、灰色の地に茶色を混ぜたようなグレイッシュな色合いの岩壁を、色鮮やかなウエアを身につけたボルダーが攀じる姿が見られます。
 岩の素性を調べてみました。太古の地球のダイナミックな地殻活動から生み出された、少し特別な岩だということがわかりました。白老町には丸い形のクッタラ湖があります。数万年前の大規模噴火の火口跡だそうです。その噴火によって周辺に大量の火山灰が降り積もりました。火山灰は自分の重さで圧縮し、やがて熱が発生して溶け、それが冷えて固まり、岩になったそうです。この岩は非常に硬くて侵食されにくく、洪水などに見舞われても岩だけは残るということです。アヨロ海岸は、その岩が連続して露出している場所だそうです。
 激しい地殻活動で形成されたこの大地で、人々は暮らし続けてきました。カメラを持った私も、この岩壁で遊ばせてもらいました。そうした営みの全てを見守り続けてきたのが天の星。この海岸の夜空を渡る天の川を撮ろうと思いました。
 この海岸に何度も足を運ぶ間に、私は撮影のポイントになる岩をいくつか見つけていました。その中に、ある特定の角度から眺めると、首を伸ばして空を仰いでいるような姿に見える岩があります。その岩をアヨロ海岸全体を象徴する存在に見立て、背後の水平線から天の川が立ち昇り、岩が仰ぐ夜空を斜めに横切るシーンを頭に描きました。
 少し気になったのは、登別漁港から出港する漁船のライト、地獄谷温泉街の灯りなどの光害です。写真仲間の情報やアドバイスなどを得ながら、その影響を最小限にとどめる季節や時間帯の絞り込みに努め、頭の中のイメージと重なる写真が撮影できる季節が、春だということがわかりました。季節が訪れるのを待ちました。
 待ち続けた春が巡ってきました。砂浜に降り立ってカメラを設置し、空を仰ぎ見る岩をフレームの手前中央に配置し、現実の風景が、頭の中で描いた風景と重なるまで待ちました。そしてシャッターを切りました。スローシャッターの効果で海面は、乳白色の靄で覆われたようになりました。そのミルキーホワイトの海の上を、ミルキーウェイが渡っていく写真に仕上がりました。
 この写真を眺めるたびに、シャッターを切る瞬間の私の気持ちがよみがえります。写真は撮る人のその時の気持ちも、同時に定着させるものだと感じています。良い写真を撮る方法の一つは、いつも前向きな気持ちでシャッターを切ること、と私は思っています。

夜明け | 撮影日: 2021.08.29

激流の中で | 撮影日: 2021.06.26

海の交差点 | 撮影日: 2021.08.29

AMBASSADOR Profile

handle name:hiro


もともと旅先で風景を楽しむのが好きであったが、ある時友人の勧めで風景写真を撮りはじめる。現在も星景写真や水辺の風景などを中心に北海道の風景を取り続けている。

<賞歴>北海道撮影ポイントランキング年間グランプリ展2018 グランプリ 他
<使用カメラ>Canon EOS 80D