AMBASSADOR/児玉 孝博
Profile>
アンバサバーおすすめの撮影ポイント
ノビタキ | 撮影日: 2022.06.05
生死が隣り合わせの中で暮らす動物の生命美を追う
アドベンチャーフォトグラファーの岡田昇さんの写真集「凍風-震える野生の記憶」との出会いが、野鳥を撮るきっかけになりました。岡田さんは世界各地の山々を登って撮影した山岳写真家であり、ロシア極東のカムチャッカの原野で生きるヒグマの接近撮影などを行った野生動物写真家。総称して日本で最も命知らずな冒険写真家とも呼ばれました。
その岡田さんは2002年冬、北アルプスの奥穂高岳で撮影中に消息を断ちました。今年は20年目の節目で、感慨深いものがあります。写真集は岡田さんが1984年から1996年にかけて撮り続けた、知床半島厳冬期の野生動物や自然の姿をまとめたものです。その中の1枚、力強さと美しさに満ちたワシの写真に釘付けになりました。
私は野鳥を撮る以前は、おもに風景写真を撮っていました。思うような写真にならず壁を感じていました。そのような時、たまたま釧路で撮影したタンチョウの写真がいい感じに仕上がり、野鳥を撮ろうかなと考え始めていた矢先の出会いだったので、よけいに野鳥撮影の意欲に火がついたと思います。
私は清水の舞台から飛び降りる思いで高額な最新機材を購入して、月2~3回のペースで知床に通い始めました。当時、今のようなネット環境はなく、情報が乏しい中、あちこちガムシャラにまわって撮影しました。こうして始まった野鳥撮影は途中、仕事の事情などで数年のブランクはあるものの、20年が経過しました。世界を駆け巡った岡田さんのスケールには足元にも及びませんが、それでも我ながら道内各地をずいぶん撮り続けてきたものだ、と感じています。
コヨシキリ | 撮影日: 2022.06.12
シマエナガ | 撮影日: 2022.02.11
キクイタダキ | 撮影日: 2022.01.10
ダイゼン | 撮影日: 2021.09.18
最近は、苫小牧市にある北大研究林にもよく通っています。明治時代に農学部が開設した広大な森林で、ビジターも入林できる一般開放区域が設定されています。四季を通じてエリア内での野鳥撮影が可能で、苫小牧市は積雪が少ないエリアなので、冬季撮影もやりやすい環境にあります。
今冬も研究林に通いました。レンズの焦点最短距離でエゾライチョウを撮りました。エゾライチョウに限らず、ここの野鳥は警戒心が薄いようで、よく人に近づいてきます。シャッターを切りたくても切れないほど間近に迫り、ニコニコしながら野鳥を観察するしかなかった経験を何度かしました。初心者には特におすすめのポイントだと思います。
このほか、札幌近郊では茨戸緑地、生振防風林なども通っています。海辺の撮影も多く、最近は八雲町の海岸でコチドリなどを撮影しました。小平町海岸では水を飲みにきたアオバトに、2キロほど離れた崖上の木から飛び立ったハヤブサが、襲いかかるシーンを撮影することができました。
鳥類最高レベルと言われる飛行速度で滑空するハヤブサは、コンパクトな体ですが、猛禽類らしい存在感に満ちていて、私が最も好きな鳥です。撮影を続けて確信したことは、生死が隣り合わせの自然の中で暮らす動物たちが放つ生命美が、野鳥を含む野生動物の写真が持つ最大の魅力だということです。その美を伝えられる撮影に努めていきます。
エゾライチョウ | 撮影日: 2022.01.08
コチドリ | 撮影日: 2022.05.21
<AMBASSADOR Profile>
児玉 孝博 / handle name:かぺ
初めてみた丹頂鶴の美しさに感動し、厳しい自然の中で逞しく生きる野生動物の姿を撮りはじめる。
休日には道内各地の野鳥や野生動物の写真を撮ることがライフワークとなっている。
<賞歴>北海道撮影ポイントランキング年間グランプリ展2019 入賞
<使用カメラ>SONY α7RⅣ、Nikon D5